オフィスで2人の企業SNS担当者が1台のノートパソコンの画面をのぞき込みながら、投稿の進め方を相談している情景

企業SNSを複数人で運用する分担の決め方|ルールと連携の型

担当が、ひとりから2人になった。

これで少し楽になる——そう思っていたのに、なぜか前より時間がかかっている。

「これ、もう出しました?」の確認が増えた。 コメントに2人とも返していたり、逆にどちらも返していなかったりする。 文章の雰囲気が、書く人によって少し変わる。 そして「これ、誰が最後にOKを出したんだっけ」が、あとから分からない。

人が増えたのに、なぜか気が休まらない。この感覚は、相性の問題でも、伝え方が下手なせいでもありません。分け方がまだ決まっていないだけです。

分け方さえ決まれば、複数人運用はちゃんと楽になります。一緒に整理していきましょう。

結論:複数人のSNS運用は、「人」で分けるとぶつかります。分けるのは投稿1本の工程です。
① 工程を「作る」「確認」「出す」に切り、作ると確認は別の人にする
② 決めることは3つだけ=最後に見る人/置き場所/見る時間
③ ルールは1枚に収める。増やすほど守られなくなる
このうち①だけでも決まっていれば、かなり静かに回ります。②③はあとから足していけば十分です。

何が起きているのか——人が増えると「つなぎの仕事」が生まれる

ひとりで運用していたとき、頭の中にあったものがあります。

次に何を出すか。前回どんな反応だったか。この言い回しは前に社内で止められた。あの画像はどのフォルダにある。——これ、全部あなたの記憶の中にありました。共有する必要がなかったからです。

人が2人になった瞬間、それが外に出さないと伝わらないものに変わります。

つまり、増えたのは手だけではありません。共有する・確認する・すり合わせるという「つなぎの仕事」が、新しく生まれています。この分の時間を見込んでいないと、増員したのに忙しくなった、という感覚になります。

この時期に起きやすいのは、だいたい次の4つです。

どれも、能力や意識の問題ではありません。役割の線がまだ引かれていないところに、それぞれが良かれと思って動いた結果です。線を引けば、ほとんど静かになります。

分担は「人」ではなく「工程」で切る

投稿1本の工程を「作る」「確認」「出す」の3つに分け、作る人と確認する人を別にすることを示した図
投稿1本を「作る」「確認」「出す」に切り分ける。ここで大事なのは、作る人と確認する人を同じにしないこと。

複数人になったとき、まず思いつく分け方は「人で分ける」やり方だと思います。

一見きれいですし、実際うまくいく場面もあります。ただ、この分け方には弱いところが2つあります。片方が休むとその媒体が止まることと、確認する人がいなくなることです。自分で作って自分で出す形になるので、誤字も、角が立つ表現も、自分では気づきにくいまま外に出ます。

そこで、切る場所を変えます。媒体やテーマではなく、投稿1本の工程で切るやり方です。

工程やること決め方の目安
①ネタを決める何を出すか決める全員で出して、決めるのは1人
②作る文章と画像を作る1本につき1人
③確認する事実・表記・見え方を見る作った人以外が見る
④出す投稿する/予約を入れる作った人でよい(出たかの確認まで)
⑤反応を見るコメント・DMを見る当番制で時間を決める

兼ねてよい工程はたくさんあります。①②④⑤は同じ人が持っても回ります。

けれど、②「作る」と③「確認」だけは、同じ人にしないでください。

これが、複数人で運用するいちばん大きな利点です。ひとり運用ではどうしても手に入らなかった「もうひとつの目」が、仕組みとして毎回入るようになります。人が増えたぶん速くなる、というより、人が増えたぶん安心して出せるようになる、という受け取り方のほうが実態に近いと思います。

投稿前に何を見るかは、あらかじめ観点を決めておくと確認役の負担が軽くなります。→ 企業SNS投稿前チェックリスト

決めることは、3つだけ

ルールをたくさん作ると、守られなくなります。最初に決めるのは次の3つで十分です。

1. 最後に見る人を、1人決める

「みんなで確認しましょう」は、優しい言い方ですが、実務ではあまり機能しません。全員が「誰かが見ているだろう」と思える状態になるからです。

決めるのは、偉い人ではなく、迷ったときの決め手になる人です。役割はふたつだけ。

とくに2つめを先に決めておくと、いざというときにもめません。「意見が分かれたら最後に見る人が決める」と全員が知っていれば、その場で立場の話をしなくて済みます。決めた人の判断が絶対に正しい、という意味ではありません。その場で前に進むための決め方を、あらかじめ共有しておくということです。

なお、確認の段数は少ないほど回ります。3人も4人も通す形にすると、そのうち「間に合わないから」と誰かが飛ばすようになります。→ 企業SNSの投稿承認フロー

2. 置き場所を、1つにする

複数人運用でいちばん静かに時間を奪うのが、探す時間です。

下書きはどこにあるか。使う画像はどれか。前に使ったテンプレはどのフォルダか。過去にどんな投稿を出したか。ひとりのときは記憶で足りていたものが、2人になると毎回の確認になります。

決めるのは「1か所に置く」ことと、「名前の付け方をそろえる」ことの2つだけです。凝った管理は要りません。→ SNS素材の管理と命名ルール

下書きやネタの置き場所は、投稿カレンダーと同じ場所にまとめてしまうと迷いません。→ コンテンツカレンダーの作り方

そして、ここだけは少し気をつけたいところです。ログイン情報を個人のメモやチャットの履歴に置かないでください。異動や退職のときに、アカウントに入れなくなることがあります。会社として管理する場所を決めて、権限は必要な人にだけ渡す形にしておくと安心です。→ 企業SNSアカウントの乗っ取り対策

3. 見る時間(当番)を決める

コメントやDMは、来る時間を選べません。だから、こちらが見る時間と担当を決めておくほうが穏やかです。

いちばん軽いのは曜日当番です。「月・水・金はAさん、火・木はBさん、それぞれ15時に10分見る」くらいの粗さで構いません。

かぶりと空白をなくすコツは、見たことを残すことです。返信したらチャットに絵文字をひとつ付ける、それだけでも「もう対応済み」が伝わります。返す・返さないの線引きは人によって変わりやすいので、テンプレを共有しておくとぶれません。→ 企業SNSコメント・DM対応ルール

人数別・体制別の型

2人のとき:主担当+確認役

いちばん多い形です。主担当が作り、もう1人は確認だけする。これで十分回ります。

確認役が「そんな時間はない」と感じているときは、見る観点を絞ってください。次の3つだけで、事故はかなり減ります。

  1. 事実と固有名詞(社名・人名・商品名・価格・日付)
  2. 画像と本文が合っているか(別の商品の写真になっていないか)
  3. 角が立たないか(読み手によって別の意味に取られないか)

すり合わせは、週に1回15分あれば足ります。来週出すものと、先週の反応。それだけです。

3人以上のとき:曜日当番+月1のネタ会議

人数が増えると、日々の連絡だけでは足りなくなります。ネタはまとめて出す機会を作ったほうが早いです。

月に1回、30分でいいのでネタを出す時間を取り、そこで1か月分を並べてしまう。あとは当番表に沿って作る。→ 1か月分の投稿をためるネタ出し会議のやり方

他部署や店舗も投稿するとき

現場の人が投稿すると、内容は一気に良くなります。ただ、人数が増えるぶん、判断のばらつきも増えます。

この形では、細かいルールより1枚のガイドラインが効きます。そして、出す前に1人だけ通す形にしておくと、現場の負担を増やさずに確認が入ります。→ SNS運用ガイドラインを社内に浸透させる進め方

現場からネタを上げてもらう仕組みは、依頼の形を決めておくと続きます。→ 他部署からネタを集める依頼テンプレ

外部の制作会社や代理店が入る場合は、社内の分担とは別に線を引く必要があります。→ SNS運用を代理店と分担するときの役割整理

トーンのぶれは、人ではなく「1枚のメモ」で直す

複数人運用でいちばん言いにくいのが、これだと思います。

「Aさんの投稿、なんかうちっぽくない」——内容は間違っていない。誤字もない。でも雰囲気が違う。これを本人に伝えるのは、けっこう気を使います。感想として言うと、人柄への指摘に聞こえてしまうからです。

だから、人ではなく紙に持たせます。

決めるのは、次のような具体的なところです。

これがあると、「ルールではこうなっています」と言えます。指摘ではなく、確認になります。→ 投稿のトーン&マナーガイドの作り方

「中の人」の人柄をどこまで出すかも、複数人だと迷いやすいところです。線の引き方はこちらに整理しています。→ 「中の人」の人柄を出す投稿と、出しすぎないライン

先に決めておくと、もめない3つの言葉

複数人でぶつかるのは、たいてい言葉の意味がそろっていないときです。次の3つは、平時に決めておくと楽になります。

1.「急ぎ」の意味

同じ「急ぎで確認お願いします」でも、片方は30分以内のつもり、もう片方は今日中のつもり、ということが起きます。「急ぎ=◯時間以内」と数字にしておくだけで、待つ側のイライラも、返す側の焦りも減ります。

2. 修正依頼を書く場所

口頭やその場のひとことで伝えた修正は、消えます。修正は1か所にまとめて書くと決めておくと、直し漏れも「言った・言わない」もなくなります。

3. 緊急時に誰へ上げるか

反応がいつもと違うとき、その場でひとりで判断しないための道筋です。誰に、どの順で、何を伝えるか。ここは平時にしか決められません。→ 緊急時のエスカレーション体制の作り方企業SNS炎上対応フロー

あなたへの影響

分担を決めると、目に見えて変わることが3つあります。

休めるようになります。 ひとり運用でいちばんつらいのは、休んだ日にアカウントが止まることでした。工程で分けておけば、片方が休んでも投稿は出ます。有給を取るのに理由を考えなくてよくなる、というのは、けっこう大きいことだと思います。

「自分だけが分かっている」状態が減ります。 これは引き継ぎのときに効きます。分担のために書いたルールは、そのまま引き継ぎ資料の下地になります。→ 担当者交代でも止まらない引き継ぎマニュアルの作り方

説明できる形になります。 「つなぎの仕事」は社内から見えません。誰が何をどれだけやっているかを工程で書き出しておくと、運用にかかっている時間を数字で説明できます。人を増やしたい、外注したいと相談するときの材料にもなります。→ 兼務でも回る「1日15分」企業SNS運用ルーティン

そして何より、判断をひとりで抱えなくてよくなります。

「これ、出して大丈夫かな」と夜に迷っていた時間が、「見てもらってから出そう」に変わる。それだけで、ずいぶん肩の力が抜けます。

明日やること

一度に全部決めなくて大丈夫です。明日はここまでで十分です。

  1. 紙かメモに、投稿1本の工程を5つ書き出す(ネタ/作る/確認/出す/反応
  2. そのうち「作る」と「確認」だけ、別の人になるように名前を書き入れる
  3. 「最後に見る人」を1人決めて、口に出して共有する(決めた、と伝わることが大事です)
  4. 下書きと画像の置き場所を1か所に決める
  5. コメントを見る当番と時間を、今週ぶんだけ決める

トーンのルールや当番表は、まだ作らなくて大丈夫です。1と2だけで、いちばん多いつまずきは減ります。

チェックリスト(保存用・複数人運用の決めごと)

初回は「決めること」の欄だけできれば合格です。 残りは、運用しながら足りないと感じたときに足していけば十分です。

決めること

日々の運用で

つまずいたときに

2人の企業SNS担当者が並んで机で作業を終え、おだやかな表情で顔を見合わせている情景

複数人での運用がうまくいかない時期があるのは、めずらしいことではありません。むしろ、ひとりで全部を回してきた人ほど、「どこまで任せていいのか」が分からなくて当然だと思います。それは抱え込みではなく、これまでちゃんとやってきた証拠のようなものです。分担は一度で正解が出るものでもありません。今週やってみて、合わなかったら来月ずらす。それで十分間に合います。まずは「作る」と「確認」を分けるところから、ひとつだけ動かしてみてください。

よければ、こちらも

分担が決まったら、投稿の反応もチームで同じ数字を見てみましょう。→ エンゲージメント率 計算機。企業SNS運用の実務ヒントは、メールでもお届けしています。よかったら受け取ってみてください。

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