2本の投稿の数字をノートに並べて書き出し、どこが違ったのかを考えている企業SNS担当者の情景

企業SNS投稿のA/Bテスト|1つだけ変えて勝ちパターンを見つける

投稿ボタンを押したあと、しばらくしてから数字を見る。

今回はいつもより伸びている。うれしい。……でも、なぜ伸びたのかは、正直よく分からない。

翌週、同じような気持ちで書いた投稿は、まったく伸びない。何が違ったのか分からないまま、また次の投稿を勘で書く。この繰り返しが続くと、だんだん「自分は運任せで投稿しているだけかもしれない」という気持ちになってきますよね。

でも、これはあなたの分析力が足りないから起きていることではありません。比べられる形で投稿していなかった、それだけです。条件がバラバラな2本を並べても、原因は誰にも分かりません。プロが見ても分かりません。

今日やるのは、難しい分析ではなく、次の投稿を1か所だけ変えて出すという、とても地味な作業です。

結論:ひとり運用の投稿テストは、この3つだけ守れば十分です。
1つ変える:変えるのは書き出し・1枚目の画像・最後の一言など、1か所だけ
そろえる:曜日・時間帯・投稿の種類は、できるだけ同じにする
くらべる:見る数字を1つだけ決めて、同じ結果が3回そろったら採用する
いちばん大事なのは、1回の差で決めないことです。1回分の差は、その日のタイムラインの混み具合でもかんたんにひっくり返ります。

何が起きているか:数字は見ているのに、次の一手が決まらない

数字を見ているのに次につながらないとき、たいてい次のどれかが起きています。

つまり、実力の問題ではなく、比べられる形になっていないだけです。ここは仕組みで解決できる部分なので、気合いを入れる必要はありません。

その前に:SNSの「A/Bテスト」は、広告のそれとは別物です

先に、正直なところをお伝えしておきます。

A/Bテストとは、2つの案(A案・B案)を出して結果を比べ、良かった方を採用する進め方のことです。広告の世界では、同じ時間に同じ人数へランダムに出し分けて比べます。条件が完全にそろうので、差が出れば「案の違いが理由だ」と言い切りやすくなります。

ただ、普段の投稿(オーガニック投稿=広告費をかけない通常の投稿)では、そこまで厳密な条件はつくれません。理由はシンプルで、

からです。ここを無視して「A案よりB案が優れている」と言い切ると、あとで自分が困ります。

なので、この記事で扱うのは厳密な実験ではなく、条件をできるだけ近づけた「比べっこ」です。精度は落ちますが、ひとり運用ではこれで十分に役立ちます。大事なのは正しさの証明ではなく、次の1本を決めるための材料だからです。

なお、機能として比較のしくみが用意されている場面もあります。たとえばYouTubeにはサムネイルを複数登録して比べる機能があり、SNS広告の配信では複数パターンを出し分けるA/Bテスト機能が用意されていることがあります。LINE公式アカウントの配信でも、プランや友だち数などの条件を満たすと使える場合があります。ただし、こうした機能の有無や条件は変わりやすいので、使う前にそれぞれの公式ヘルプで現在の仕様を確認してください。

テストの進め方:1つ変える → そろえる → くらべる

投稿テストの3つの手順(1つ変える・そろえる・くらべる)を左から順に並べて示した図
やることはこの3つだけ。1か所だけ変えて、条件をそろえて、決めた数字だけを見る。

ステップ0:見る数字を1つだけ決める

最初に決めるのは、「どれが伸びた」と判断する数字を1つだけにすることです。ここが決まっていないと、都合のいい数字を後から選んでしまいます。

目的別の目安は次のとおりです。

迷ったら、エンゲージメント率にしておくと扱いやすいです。表示回数の多い少ないに引っぱられにくく、投稿の中身の差が出やすいためです。計算のしかたはエンゲージメント率の出し方|計算式と「良し悪し」の見方に詳しくまとめています。

ステップ1:変える1か所を選ぶ

変えるのは1か所だけです。2か所変えると、差が出たときにどちらが効いたのか分からなくなります。

迷ったら、上から順に試すのがおすすめです。効きやすく、作り直す手間も小さい順に並べています。

  1. 書き出しの1行(例:「知っていますか?」→「これ、毎回やってました」)
  2. 1枚目の画像(例:商品だけ → 使っている場面)
  3. 最後の一言(例:何も書かない → 「よければ保存してどうぞ」)
  4. 投稿の長さ(例:長めの解説 → 3行に絞る)
  5. ハッシュタグの数(例:10個 → 3個)

「1回のテストで1つ」が守れていれば、順番はどれからでも大丈夫です。書き出しの型そのものに迷いがあるときは、反応が伸びる投稿文の書き方|型・言い回し・例文テンプレ集も参考にしてみてください。

ステップ2:条件をそろえて出す

同じ土俵に乗せるために、変えない部分は徹底してそろえます

自分のアカウントに合う時間帯がまだ分からないときは、先に企業SNSの投稿時間はいつがいい?自分の数字で見つける手順で土台をそろえておくと、テストの精度が上がります。

ステップ3:3回そろったら「勝ち」にする

ここがいちばん大事です。1回の差では決めません。

「3週間もかかるのか」と思われるかもしれません。ただ、1回で決めてしまうと、間違った勝ちパターンを何か月も使い続けることになります。急がば回れ、というより「急いでも回れない」のがこの作業です。

具体例:書き出しを3週間くらべてみた

イメージしやすいように、架空の例で見てみます。見る数字はエンゲージメント率(反応数 ÷ 表示回数)、変えたのは書き出しの1行だけ。毎週月曜の12時、画像1枚の投稿でそろえています。

表示回数反応数エンゲージメント率
1週目A1,000121.2%
2週目B1,10024約2.2%
3週目A90091.0%
4週目B1,20027約2.3%
5週目A1,000111.1%
6週目B1,000191.9%

3回ともB案が上でした。しかも差は約2倍で、誤差とは言いにくい大きさです。ここではじめて「うちのアカウントでは、失敗から入る書き出しの方が反応されやすいらしい」と言えるようになります。

大事なのは、これで分かったのは書き出しの型についてだけ、ということです。画像や投稿の長さについては、まだ何も分かっていません。次はそこを1つ変えて、また3回くらべます。

1回のテストで分かるのは、1つのことだけ。逆に言えば、月に1つずつでも積み上がれば、1年後には「自分のアカウントの勝ちパターン」が10個以上たまっています。

やらない方がいいこと

遠回りになりやすいものを、3つだけ挙げておきます。

1. 一度に2か所以上変える 「時間もないし、まとめて試そう」となりがちですが、差が出ても原因が特定できず、結局やり直しになります。もったいないのは時間そのものより、せっかく出した投稿が材料にならないことです。

2. 同じ日に2本出して比べる 一見フェアに見えますが、朝と夕方では見ている人が違いますし、自社の投稿どうしで見られる時間を取り合ってしまいます。日をずらして、曜日と時間をそろえる方が結果は素直に出ます。

3. フォロワーが少ないうちに細かい差を追う 表示回数が3桁前半のうちは、数人の行動で数字が大きく動きます。この段階では、テストより投稿を出し続けて母数を増やす方が効きます。細かい比較は、数字が安定してきてからで十分です。

あなたへの影響

この進め方が回りはじめると、いくつか変わることがあります。

とくに3つ目は、気持ちの面で大きいところです。伸びなかった投稿を「失敗」と呼ばなくてよくなるのは、続けるうえでかなり効きます。

明日やること

明日できるのは、ここまでです。

  1. 見る数字を1つ決めて、メモに書く(迷ったらエンゲージメント率)
  2. 次の投稿で変える1か所を決める(迷ったら書き出しの1行)
  3. A案とB案の書き出しを、2つだけ書いてみる(1分で大丈夫です)
  4. 投稿予定に「A案/B案」とだけ書き足す(どちらを出したか分かるように)
  5. 記録する場所を1つ作る(日付・案・見る数字の3列だけのメモで十分です)

シートを整える必要も、ツールを入れる必要もありません。「次の投稿はA案」と書いた時点で、テストはもう始まっています

チェックリスト(保存用・投稿テストの進め方)

現場でそのまま使えるように、確認項目にまとめました。

全部そろわなくても大丈夫です。「1か所だけ変える」と「1回で決めない」の2つが守れていれば、残りは後からで間に合います

よければ、こちらも

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3週間分の記録をノートで確認し、次に試すことが決まってすっきりした表情の企業SNS担当者の明るい情景

投稿が伸びた理由が分からない夜も、伸びなかった理由が分からない朝も、これまで何度もあったと思います。

でも、そこで「なぜだろう」と考えていたこと自体は、まったく無駄ではありませんでした。足りなかったのは考える力ではなく、比べられる形にしておくという、たった一手間だけです。

明日の投稿の書き出しを、いつもと少し変えてみる。それだけで、来週の数字はもう「材料」になります。3週間後、あなたの手元には、誰にも借りていない、自分のアカウントだけの答えがひとつ残っているはずです。

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